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4. 子どもの「死」の理解
子どもがどの程度「死j を理解できているかは発達段階とこれまでに死の場面にどのように出会ってきたかによって異なります。一般に、4歳以降には「死」ということをある程度理解しますが、幼児期にはあっちの世界に会いに行って戻って来られると思っていたり、再生できると思っていたりすることもあります。小学生年代になると、生きているものは死ぬ可能性があることは理解しますが、死が全ての人に起きることであることを理解することは難しいものです。中学生年代以降には、たいていの子どもは大人と同じように、「死j は生物体として永久に生命活動を失うことであると理解していますが、少数の子どもでは、まだ十分に理解できていない場合もあります。
子どもが「死」に関して質問してきたら、魂は別の世界に行って戻ってこないこと、心の中に思い出として生きているが会いには行けないこと、身体は土にかえることなどを説明しましょう。できるときには、子どもの育った家庭の宗教や文化を考えて説明に織り込むと良いでしょう。
大人も「死」を語ることは避けたいものです。しかし、大人が避ければ、子どもは表現する機会を失います。ごまかさずに、誠実に向き合って答えましょう。

5. 初期にみられる子どもの反応とそれへの対応
1)混乱
子どもは自分には処理できない余りの大きな出来事に混乱することは当然です。叱るのではなく「どうしていいかわからなくなるよね」などの声かけをしましょう。

2) 怒り
「何故自分が?」と言う気持や「何故私を捨てていったの?」という気持ちなどから怒りが強くなるのも当然です。いらいらしたり、当たり散らす時期もあるでしょう。当然の感情であることを告げて、子どもが罪悪感を持つことを防ぎましょう。

3) 強い悲しみ・落ち込み・引きこもり
親が亡くなった時には強い悲しみを感じると同時に、自分の存在自体が失われるような強い喪失感が出現します。そのために、落ち込んだり、引きこもったりすることがあります。初期には当然なこととして受け入れましょう。ただし、小さな子どもで強い食事の拒否がある時などは専門家と相談しましょう。

4) なかったことにする
もう一つ、子どもによくみられるのは何もなかったように、あるいは亡くなった方が生きているようにふるまうことです。特に行方不明の場合には、受け入れられないことも多いと考えられます。無理に認めさせる必要はありませんが、この状態が長期にわたることは決して良いことではありません。徐々に受け入れられる支援が必要です。

5) 赤ちゃんがえりや分離不安
赤ちゃんがえりをしたり、一人になることを不安がって残された家族に付きまとうこともあります。叱ったりするのではなく、スキンシップを心がけましょう。

6) 自分のせいにする
一般的に子どもは「死」の原因を自分に引き付けて考えることが多いものです。例えば、「昔、お父さんから怒られた時に『お父さんなんか死ねばいい』と自分が思ったからお父さんが死んでしまった」と思う子どももいます。けんかしたからお兄ちゃんが死んじゃったと思うこともあります。それを外に表現せずにいらいらしたり、引きこもったり、自暴自棄の行動をしたり、中には自傷に至ることもあります。従って、大切な人の「死」はあなたのせいではないことを予め伝えておくことは必要なことなのですし、子どもと話をしてそのような気持ちを持っていないかを確かめることも大切です。

7)その他の罪悪感
自分だけ助かったこと、自分が親を守れなかったことなどから、罪悪感を抱くことは多いものです。「あなたは悪くない」というメッセージが役に立ちます。

8) 良い子になりすぎる
がんばって、「良い子」の行動をすることも多いものです。決して悪いことではなく、褒めることは大切ですが、極端に褒めるのではなく、時々、肩の力を抜けるような場を作りましょう。そして、もともとのあなたで十分であることを伝えましょう。

9) 自分を亡くなった人に重ねる
母親を亡くした子どもが母親のようにふるまってケアをしようとすることもあります。時には、亡くなった人の声色を使うなど、自分が亡くなった人になったかのように行動する子どももいます。子どもが自分自身を取り戻すように、「亡くなった人」の話をして、客観視できるように支援しましょう。それでも続く時には専門家に相談しましょう。

10) 亡くなった人の声を聞く
亡くなった人の声を聞くことは少なくありません。否定するのではなく、聞こえるのは不思議ではないが、現実には声はしていないことを確認しましょう。それでも現実に聞こえると言い張ることが長期化していたり、その声に従おうとしたりする時には専門家に相談することが必要です。

11 )新しい親代わりとの関係性を築くことを避ける
本来は、子どもが安心して依存できる人(新しい愛着対象)ができることが重要なのですが、その人との関係性ができることが、亡くなった親を裏切るような気がするために拒否することがあります。また、中には自分を捨てた親への怒りを新しい親代わりの方にぶつける子どももいます。初期にはその気持ちを大切にしてあげましょう。一緒に亡くなった方のご位牌に、一緒に手を合わせるなどが役に立つこともあります。

12) 希死念慮
しばらくしてから、うつ状態が悪化して希死念慮に至ることもありますが、稀に、子どもの中には亡くなった方の後を追いたい、もしくは追わなければならないという気持ちに駆られる時があります。亡くなった方の死を受け入れられない場合が多いのです。子どもに寄り添って、亡くなった人の生きていた時のことを話題にしたり、十分に話を聞いてあげていれば、後を追うことは少ないものです。しかし、亡くなった方に会いに行くといってきかなかったり、死にたいと訴える時には早期に専門家に相談しましょう。

6. トラウマを伴う喪失体験
親を失うことがトラウマとなる体験を伴っている時にはトラウマへの対応を同時に行うことが必要となります。親を失った子どもが安心して寄り添える人ができることは恐怖の体験を表現して回復していく道筋でもあります。子どもが安心して依存でき
る人ができることが基本ですが、喪失を伴うトラウマからの回復は専門家の支援が望ましいと考えられます。

7. 中長期的な影響
子どもは発達に応じて時折、質問をしたり、亡くなった親の話をしてくることがあります。動揺せずにしっかり向き合って答えましょう。子どもにとって、亡くなった人の話をすることは、「死」の話をしているわけではないのです。その人が「生きていた時間」を話していますし、それは、その子ども自身の心の中に大事にされていることに他なりません。「お父さん、そう言ってたんだね」「お母さん、これ好きだっ
たよね」などと、ともにわかちあって下さい。わからないことはわからないと答えることも必要です。また、初期には当たり前の反応でもそれが長期に強く出現することは問題です。また、初期には何も反応を見せていなかった子どもがうつ状態になったり引きこもったりすることもあります。3~4 か月以上たっても反応が強い時には専門家への相談が必要です。

8. 命日反応
命日に混乱を見せたり、不安が強くなったり、落ち込んだり、様々な反応があらわれることがあります。一般にはその時期を超えるとおさまりますが、命日にはお線香をあげる、お祈りするなどのセレモニーが必要です。

9. 親以外の喪失体験
親以外の家族、親戚、友人、知人などの死、コミュニティーの崩壊、転居なども子どもにとっては大きな喪失です。親御さんの支えが最も重要な時です。しかし、親御さん自身がトラウマを受け、喪失に苦しんでいます。そのために、うつ状態やハイテンション(軽操状態)になって子どもの気持ちに寄り添えないことも少なくありません。周りの誰かが子どもの気持ちに気付くことが大切です。
国立成育医療研究センター作成の文面を転記しました。


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